ゆりが咲きました!
作編曲家/キーボード奏者、デイブ・グルーシン Dave Grusin(1934〜)
フュージョンを広めた、立て役者の一人
1970年代前半、ミュージック・シーンに一つの大きな流れが生まれました。ジャズとロックの融合によって誕生したフュージョンの流行です。スマートなセンスとファッショナブルなそのサウンドは、それまでジャズ一筋だったファンをも取り込んでいきました。そんなブームの中でもっとも重要な役割を果たしたアーティストの一人がデイブ・グルーシンです。
もともとは歌手の伴奏やテレビ・映画用の音楽を作編曲していたグルーシンの経験と才能は、緻密なアレンジが必要とされるフュージョン・ミュージックで存分に発揮されることになります。ハイセンスでありながらわかりやすい彼の音楽は、リスナーはもちろんミュージシャン仲間からも高く評価されました。パティ・オースティンの『ハバナ・キャンディ』やアール・クルーの『フィンガー・ペインティング』、リー・リトナーとの双頭リーダー作『ハーレクイン』など、グルーシンが参加・プロデュースしたフュージョンの名盤は数え切れませんが、中でも忘れられないのが我が国の代表的サックス奏者、渡辺貞夫とのコラボレーションです。『マイ・ディア・ライフ』『カリフォルニア・シャワー』などの大ヒットは、グルーシンなくしてはありえなかったともいえるでしょう。
70年代後半になるとグルーシンは、フュージョン専門のレーベルと言ってもいい「GRP」を設立。盲目の女性歌手ダイアン・シューアやラテン・フルートの貴公子デイブ・バレンティンといった有能な新人を発掘する一方で、ジャズ界を代表するキーボード奏者であるチック・コリアとも契約を結び、傑作の数々を世に送り出しました。また85年にはGRPのアーティストを総動員した“GRPオールスター・ビッグバンド”を結成し『オール・ブルース』などのアルバムをリリース、“ビッグ・バンドは売れない”という業界の常識をくつがえしました。このところ新作のニュースがないグルーシンですが、あの軽やかなサウンドでふたたびファンを魅了してほしいものです。